ベテランの知恵
- 2021.06.01
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私の実家には今は珍しい大きな蔵がある、悪いことをすると罰として蔵に閉じ込められた。
蔵のカギは外にあるため、閉じ込められると中からは開かない。火災になると家宝を失うため、蔵には電気が来ておらず灯りはない。
蔵のカギを閉めるのは父親、カギを開けてくれるのは爺ちゃん、爺ちゃんでないと蔵のカギは開けられない、開けるにはコツがあるから。
コツを聞いて私が試みるのだが蔵のカギは開かない、父親が試みても開かない、蔵のカギは爺ちゃんしか開けられない。
その爺ちゃんが天国へ旅立ち、蔵は長く開けられずにいた。
母親、「お父さん(お爺ちゃんのこと)が大事にしていた家宝って何?」
父親、「何だっけな?」
母親、「蔵を開けてみない?」
父親、「無理だよ、あの蔵は父さん(爺ちゃん)しか開けられない」
業者さんに来てもらうことになった。
家に来た業者さんは2人、1人は若い人で、もう1人はベテランさん。
先に鍵開けに挑戦したのは若い鍵屋さん、奮闘の甲斐なく蔵のカギは開かなかった。
次に挑戦したのはベテランの鍵屋さん、その方の鍵開けを見ていた高校生の妹は「お爺ちゃんと同じことをしている」。
古いカギを開けるにはコツがあるらしく、ベテラン鍵屋さんのお陰で蔵は開いた。
蔵の中にあった家宝は母親が期待したものではなかったが、家族の思い出が大事に保管してあった。
業者さん、「どうします、新しいカギと交換をしますか?」
父親、「そうだね、開けられないカギでは不便だからな」
蔵のカギは屋外にあり、錆び付いているのか開けるにはコツがいる。
カギを交換したことで蔵には自由に入れるようになったが、閉じ込められたトラウマが残っているため、大人になった今も1人では蔵に入れない。
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