助かった

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“私が生まれ育ったのは閑静な住宅街、古くからの住民が今でも多く住んでいるため治安は悪くありません。治安が良いと雨戸を閉める家は殆どいないのですが、梅雨の時期になると雨戸を水洗いするのが毎年の恒例行事になっており、ある家が雨戸を水洗いしていると、それに追随するのは御近所付き合いが上手くいっているから。
梅雨の時期に雨戸を水洗いするのは、隣の家に水が掛かり迷惑を掛けるのを最低限に抑える配慮から、隣の家も雨戸を水洗いするのですから水で家を濡らしてしまうのはお互い様。
雨戸を開け閉めする際に発生する音が年々うるさくなるのは、雨戸の劣化が進んでいるから、1年に1回開け締めする程度のため、劣化が進んでもわざわざ雨戸を交換する家はいません。
開け閉め時がうるさいと潤滑油を塗ってはみるのですが、大した効果はない、1年に1回あるかないかのため、うるさくても気にはしないのですが、雨戸の鍵はとっくの昔に壊れて使えません。このことを近所の人に話すと、「うちの家も同じよ」、雨戸の鍵が壊れている家は他にも多かったのですが、どこの家も雨戸の鍵を直すことはしません。
大雨が降った時には流石に雨戸を閉めたのですが、風が強くなると鍵が壊れている雨戸は勝手に開いてしまう、このままでは家に居たら危険と言われ、高台にある寄り合い場へ移動することに。
住民の多くが寄り合い場に集まったのですが、寄り合い場の鍵を持っている人が鍵を失くしたらしく、このままでは年寄りらが風邪を引いてしまうため、近所のガラス屋さんに電話をすると、「ガラスが割れた家が多く直ぐには行けない」。
スマホで直ぐに来てもらえる業者を探したのですが、どこも同じ状況、業者さんが来てくれたのは2時間後、住宅街が出来た時に建てられた寄り合い場のため、寄り合い場の雨戸も錆びから作業は困難と思われていたのですが、業者の手に掛かると錆びついた鍵でもはあっという間に開き住民は安堵。
当初は鍵を失くしてしまった者を住民達は怒っていたのですが、住民全員が無事だったことが分かると手を取り合い喜んでいました。”