やっと着いたのに

NO IMAGE

母方の祖父から譲り受けた別荘へ、家族で行くことになった。
私、「忘れ物は無い?」
子供たち、「無いよ(テンション高め)」
私、「宿題は持った?」
子供たち、「持った(テンション低め)」
私、「ママ(妻のこと)、カギは持った?」
妻、「持ったわよ(テンション低め)」
妻のテンションが低いのは、いつものこと。
念の為に
私、「別荘のカギを持って来た?」
妻、「しつこいわね」
と言って妻は、別荘のカギを子供に渡すと、受け取った子供が車を運転している私に見せてくれた。
私、「カギはママに返しておいて」
子供、「うん」
譲り受けた別荘までは車で2時間程なのだが、渋滞にはまってしまい、
子供たち、「まだ着かないの?」
私、「もうちょっとだから、我慢しなさい」
暫くすると
子供たち、「ねえ、まだ?」
私、「あと10分」
10分が経つと
子供たち、「まだなの?」
私、「あと5分」
5分が経つと
妻、「いつになったら着くの?」
子供たちが目的地に着かずイライラしているのに、母親までが火に油を注ぐようなことを言うため、子供たちが車内でケンカを始めた。
子供たちのケンカは、いつも妻の「ウルサイ」で終わる。
子供たちが静かになった頃に、やっと別荘に着いた。
母親に叱られた子供たちはテンション低め、妻は家を出る時からずっとテンション低め、唯一テンションが高かったのは、車の運転から開放された私。
上の子、「ママ、別荘のカギを貸して、僕が開けるから」
すると、下の子が、「僕が開けたい」
上の子、「ダメ、僕が開ける」
すると、下の子が泣き始めた。
親としては、子供のどちらかだけにカギを開けさせるわけにはいかないため、
私、「カギを貸しなさい、パパが開けるから」
すると、今度は上の子が泣き始めた。
子供たちの泣き声は、いつも妻の「ウルサイ」で終わる。
子供たちは泣き止んだのだが、
妻、「早く開けてよ」
私、「・・・」
妻、「貸して、私が開けるから」
別荘のカギを妻に渡すと
妻、「・・・」
子供たち、「開かないの?」
妻、「黙ってなさい」
妻がこういう時は、図星の時。
祖父の別荘を譲り受ける際、他の親戚と相続で揉めたため、親戚が別荘のカギを別のモノに変えていた。
別荘から親戚の家までは車で2時間、どうしよう?
妻、「鍵屋さんに来てもらいましょう」
私、「そうだね」
鍵屋さんに連絡すると混み合っているため、来てくれるまでには2時間以上掛かると言われたのだが、相続で揉めた親戚の所へ行くよりは、何時間でも待つほうがマシ。
来てくれた鍵屋さんは、親戚が別荘のカギを別のモノに変えた際の鍵屋さんでもあったため、私が相続をしたことを話すと、分かってくれた。
3年ぶりに入る別荘には、祖父や親戚らと一緒に撮った写真が飾ってあり、それを見て上の子が「また、皆でバーベキューがしたいね」と言った、すると、私には写真に映る祖父が微笑んでいるように見えた。