側溝に落とした鍵

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田舎から祖父母が遊びに来ていたときのことです。
最終日の朝、みんなでモーニングを食べに行こうと家を出ました。
近所の喫茶店だったので、とくにカバンなど持たずラフな格好で
行くことにしました。

ところが喫茶店から帰ってくる途中、側溝に鍵を落としてしまいました。
鉄柵がはまっていて、簡単には取ることが出来ません。
運の悪いことに、鍵を持っていたのは父一人でした。
困ったのは、祖父母が飛行機の予約をしていたことです。
まだ2時間ほどありましたが、搭乗手続きに1時間ほどかかるので
そろそろ出発の時間が迫っていました。

「スペアキーって、誰か持ってなかったっけ?」
「みんな家の中だよ」
よりによってこんなときにと思いましたが、何とか家に入る手段を
考えなくてはなりません。

鍵の業者を呼ぼうかと思いましたが、まだ携帯の無い時代だったので
すぐには手配できず、家のドアの前で立ち尽くしてしまいました。
「飛行機のチケットは、また取れば良いから」と祖父母は言って
くれましたが、高額な料金です。
そういうわけにはいきません。

ふと見ると、玄関ドアの横にある子供部屋の窓の鍵が
開いていました。
鉄柵が掛かっているので、換気用に開けていることがあります。
どうも開けっ放しで外出したようです。
「この柵を取り外せば、中に入れるよ」
外の物置から工具を取り出し、私と父でネジを外しました。
ほどなくして、鉄柵は外れ家の中に入って内から鍵を開けました。
おかげで祖父母の飛行機の時間も遅れずに済みました。

それ以来、どんな近所でもそれぞれが鍵を持って出るように
クセを付けたので、鍵のトラブルはなくなりました。

鍵 北九州